今回は初めてパソコンでオペしたりと不慣れのことが多かったのですが、それよりも、音響には珍しく大じかけがありました。
今回の公演、天井につるされたスピーカーに気付かれた方はいらっしゃったでしょうか?
実は、スピーカーは完全に裏返しになっていました。
今回の舞台は「舞台裏」。作品中に流れる曲は、実はパネルの向こう、本番の舞台で流れているという設定でした。なのでスピーカーは「舞台」に向けて吊ってあったのです。
さて、「廃業(仮)」の中ではこの原則に反する音がありました。
ユキタロウのリュックに入ってる電話です。
この電話は「舞台」に向けて流れる音ではないから、スピーカーからは流さない!と堀之内音響チーフが決められて
ではどうする?
電話は完全にただの道具です。音は鳴りません。
卓席は舞台から遠いです。袖でこっそり鳴らすわけにもいきません。
しかし電話は鳴りました。それもちゃんとリュックの中から。
あの電話、黒電話のくせにコード先にアンテナがついている妙な携帯電話でしたよね?
半分は本当でした。
音を鳴らした犯人は、無線機です。
きっかけの瞬間、卓席の送信機から無線で音が飛び、リュックに仕掛けた受信機が受けとり、同じくリュックに押し込まれた小さなスピーカーから音が鳴っていたのでした。
無線機の充電切れが心配で本番と本番の間は常に充電していたり、
スピーカーのスイッチが切れないよう絆創膏を貼りつけたり、
電波が切れてしまうので役者に楽屋に上がるなと言いつけたり、
実は初回は音が鳴らせなかったり、
本当に世話の焼ける子でしたよ。
それにしても、こんな無線機が一般に売られていたとは。
オーディオは一般の世界をはるかに超えています。
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