「AIとまこと -完全版-」が終演を迎え、早くも2週間が経とうとしております。改めてご来場いただいたお客様、行きたかったけどご都合が合わなかった皆様、行く気は無かったけどtwitterくらいは見てたよという方々、まとめてお礼申し上げます。ありがとうございました。作者の音間哲でございます。すでに次公演準備が始まっているなか今さらではありますが、ほんの少しばかり芝居について振り返らせていただきます。
キャラクター1人1人について語りたいこともあるのですが、流石に長くなるので主要な2人についてだけ。まずは主役である座長ことノブハラ。
ノブハラのフルネームを漢字で書くと「信原誠」になります。終演後の2劇twitterでもつぶやきました通り、登場人物は全て南総里見八犬伝の8つの徳目「仁義礼智忠信孝悌」から1文字を与えられています。書き始める前に「信」の意味を調べてみると「自分の言葉を最後まで貫き通す」だとか。時代に抗って手書き台本にこだわりながら、最後にジーンが生成した台本を選ぶ彼には、相応しいようで全くの逆です。つまり私はそれぞれのキャラクターを「与えられた文字の徳を持っていない」ように設定していたのです。賢く振舞っているようで肝心のツメが甘い「智」のトモヒコ(演出助手)のように。欠点があるのが愛すべき人間ですもんね。
ではジーンが「仁」の表す慈愛の心を持っていなかったのか。こればっかりは私にもわかりません。それだけではなく、ジーンは最初から最後まで珍しいくらい私自身にもわからないキャラクターでした。ジーン自身が理解できない存在であることを望んでいた気もします。ジーンに善意、あるいは悪意が存在したのかは今でも気になっているところです。
とはいえ、1人のSFファンとしてはHAL9000のはるか子孫である彼女にデイジー・ベルを歌わせることができて、たいへん満足していますが。(部屋の棚に「2001年宇宙の旅」のDVDがあったことに気づいた方はいらっしゃいますかね?)
ちなみに彼女が口にする「僕はなぜ自分の人生を窓の外から眺めているのだろう」というフレーズ。「アルジャーノンに花束を」を初めて読んだときにとても心に残った一節なのですが、その後、何度再読してもこのフレーズを見つけられたことがないんですよね。読んでる版が変わったから? それとも何かの記憶違い? この芝居と関係あるような無いような、私にとっての最後の小さな謎だったりします。
テーマとかはここで語るよりも、皆様が見て感じたものが正解であるべきですから語りません。ただ一つ言えるとしたら、AIがおはなしを作る時代は割と近いうちに来ると思ってます。個人的に。
「ほんの少しばかり」じゃなかったのかって? 台本書きなんて嘘つきの別称ですからいやマジで。音間哲でした。