雲外蒼天
私の記憶が正しければ、これは高田郁の小説『みをつくし料理帖』の第一巻で主人公が占い師から受けた言葉だ。
「蒼天」といかにもおめでたい内容のように聞こえるが、実は「旭日昇天」というもっと良い相があって、こちらは「朝日が昇るように勢いの盛んなこと」を表す、とても縁起の良い言葉である。
ではどうしてわざわざより悪い方の「雲外蒼天」が好きなのかといえば、単純に「人生、うまくいかないこともある」からだ。
もちろん心は晴れ晴れとしているのが一番なのだが、時にふと日が翳って冷たい風が吹いたり、雨に濡れてしまったりすることもある。
そんな時は無理に笑う必要はないし、思いきり泣いたっていい。
けれど厚く垂れ込めた雲の向こうには、いつだって青空が広がっているのを思い出そう。同じ雨模様でも、その後にかかる虹のことを思えば自ずと見え方も変わるというものだ。
「雲外蒼天」─それは、どんな困難や試練でも、その向こうにはきっと素敵な未来が待っているという、人々が紡いできた望みであり、祈りの言葉なのである。
やまない雨はない。ありきたりな考え方かもしれないが、だからこそ「雲外蒼天」の一言をいつも忘れずにいたい。